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建物管理委託契約書とは?含めるべき業務内容や注意点も解説
建物管理委託契約書とは?含めるべき業務内容や注意点も解説
ビルオーナーやマンションを管理する方の中には、建物管理委託契約書について「どのような業務内容を含めるべきか」「トラブルを防ぐにはどうすればよいか」という疑問を抱えている方も多いでしょう。
管理業務の複雑化や法改正への対応、入居者満足度の向上など、建物管理には専門的な知識と質の高い対応が求められます。しかし、建物管理委託契約書の内容が曖昧だと、後々のトラブルや管理品質の低下につながりかねません。
本記事では、建物管理委託契約書の基本的な内容や含めるべき業務範囲、トラブルを防止するためのポイントを詳しく解説します。
■建物管理委託契約書とは
建物管理委託契約書とは、ビルオーナーや管理組合が建物の管理業務を専門の管理会社に委託する際に作成する契約書です。
建物管理委託契約書を作成することで、委託する管理業務の範囲や条件、責任の所在が明確になります。
賃貸物件の場合、入居者への対応や家賃の回収、清掃業務などの管理を委託します。具体的には、主に以下の業務をおこないます。
●入居者からのクレーム対応
●家賃の管理
●建物の日常清掃
一方で、分譲マンションの建物管理委託契約では、管理費・修繕積立金などの徴収や共用部分の設備のメンテナンス、長期修繕計画の策定などを委託します。
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律第73条では、管理会社は建物管理を委託する際に建物管理委託契約書を交付する義務があるとされています。管理業務上のトラブルを防ぐために欠かせない書面です。
■建物管理委託契約に含めるべき業務内容
建物管理委託契約では、具体的な業務範囲を明確に定めることが必要です。で具体的には、以下の業務内容を建物管理委託契約に含める必要があります。
●共用部分の清掃業務
●設備点検・メンテナンス業務
●廃棄物処理・ゴミ出しの管理
●クレームや入居者対応の代行業務
●長期修繕計画の策定
各ポイントを詳しく解説します。
・共用部分の清掃業務
建物の美観や衛生環境を維持して、入居者の快適な生活環境を保つために必要なのが、共用部分の清掃業務です。管理会社は、主に以下の清掃業務を請け負います。
●エントランス
●階段
●廊下
●ゴミ置き場
●駐車場・駐輪場
清掃業務には「日常清掃」と「定期清掃」の2種類があります。日常清掃では床の掃き掃除や拭き掃除、ゴミの分別や回収、共用トイレの清掃などを定期的におこないます。
一方で、定期清掃では洗浄に特化した機械を使用した床の洗浄・床磨きや窓ガラスの清拭、外構部分の除草作業などを定期的におこなうのが一般的です。
清掃業務を管理会社に委託すれば、専門的な知識と技術を持つスタッフが清掃をおこなうため、建物全体の美観が保たれ、入居者の満足度が向上します。建物管理委託契約書では清掃範囲や頻度、作業時間帯などを確認し、清掃業務の品質を明確にしておきましょう。
・廃棄物処理・ゴミ出しの管理
建物の衛生環境の維持や近隣トラブルの防止に直結するのが、廃棄物処理・ゴミ出しの管理業務です。主な管理業務は以下のとおりです。
●入居者が排出するゴミの分別
●回収日に合わせたゴミ出し
●ゴミ置き場の清掃・管理
具体的には、各自治体のゴミ分別ルールに基づいた分別指導や、回収日当日の早朝ゴミ出し作業、回収後のゴミ置き場清掃などをおこないます。
ゴミ出しが適切におこなわれなければ、近隣住民からのクレームや害虫が発生する要因となるため、管理会社による管理が必要です。建物管理委託契約書では、対象となるゴミの種類や作業の時間帯、費用負担や緊急時の対応方法を具体的に定めておきましょう。
・クレームや入居者対応の代行業務
クレームや入居者対応の代行業務は、ビルオーナーの業務負担軽減と入居者満足度を向上させるためにおこなう業務です。入居者対応では、主に以下の業務を代行します。
●隣の部屋や近隣住民との騒音トラブル調整
●共用部分の利用マナー違反者への注意
●契約更新手続きの案内
●設備故障の緊急対応
例えば、深夜にオートロックの故障が起きた場合に専門業者へ連絡したり、入居者間の騒音トラブルで両者への聞き取りをおこなったりと、対応業務は多岐にわたります。
入居者対応に精通しているスタッフが対応することで、状況に合った適切な対応ができるため、問題の早期解決や入居率の向上につながります。建物管理委託契約書では対応の時間帯や緊急時の連絡体制、対応可能な業務範囲や費用負担の区分を明確に定めておくと安心です。
・長期修繕計画の策定
計画的に修繕をおこない、建物の資産価値を維持するために必要なのが長期修繕計画の策定業務です。長期修繕計画では、主に以下の範囲の大規模修繕時期や費用を計画します。
●外壁塗装
●屋上防水
●給排水管の更新
長期修繕計画の策定では、建物の現地調査を実施し、各部位の劣化状況を確認します。例えば、外壁塗装は15年周期、屋上防水は12年周期といった具合に、部位ごとの修繕周期と概算費用を設定するのです。
分譲マンションでは、修繕積立金の収支予測を分析し、資金不足が予想される場合は修繕積立金を増額する提案もおこないます。
長期修繕計画を適切に策定すれば、突発的な大規模修繕による費用負担を避けられるほか、建物の寿命を延長したり快適な居住環境を提供したりすることが可能です。
契約書では計画の期間や見直し頻度、調査範囲や策定費用を具体的に決めておきましょう。
■建物管理委託契約を締結するにあたりトラブル防ぐ方法
建物管理委託契約でトラブルを防ぐためには、次の4つのポイントを押さえておきましょう。
●業務範囲と内容を明確に記載する
●業務の頻度・時間・報告義務を取り決める
●瑕疵やミスに対する責任の所在を明確にする
●契約解除・更新のルールと条件を記載する
各ポイントを詳しく解説します。
・業務範囲と内容を明確に記載する
建物管理委託契約では、管理会社によって提供するサービス内容が異なるため、業務範囲と内容を明確に記載する必要があります。
例えば、清掃業務では「エントランス・共用廊下・階段・窓ガラス・ゴミ置き場」、設備メンテナンスでは「自動ドア・防犯カメラ・消防設備・エレベーター・給排水設備」など、メンテナンスをおこなう箇所を明確に記載しましょう。
さらに、家賃の督促業務や入居者募集の業務が含まれるかどうか、含まれる場合は手数料がどれくらいかかるのかについても明記しておきます。
トラブルに対応した際にビルオーナーへ事前に相談するか否か、深夜などの緊急時にどのように対応するのかについても、具体的なケースを想定して取り決めておくと安心です。
・業務の頻度・時間・報告義務を取り決める
管理業務の頻度・時間・報告義務を取り決めることで、管理業務の品質を高め、透明性を確保できます。
例えば、日常清掃の頻度を「共用廊下・階段を週2回掃き掃除、窓ガラス清拭を月1回、ゴミ置き場を毎日清掃」などと取り決めれば、ビルオーナーは管理状況を把握することが可能です。
また、分譲マンションの場合は「平日9時~17時は管理員が常駐し、夜間・休日は24時間コールセンターが対応」「月次点検は毎月第2週目に実施し、報告書は翌月5日までに提出する」など、具体的に定めておくと良いでしょう。
報告内容についても、収支状況や修繕履歴、クレーム対応の記録などの項目を明記し、書面またはデジタル形式などの提出方法を決めてください。
さらに、「緊急事態発生時の初動報告は24時間以内」「詳細な報告は1週間以内」など、報告のタイミングも具体化しておくと安心です。
・瑕疵やミスに対する責任の所在を明確にする
損害が発生した際の迅速な解決や補償のためにも、あらかじめ瑕疵やミスに対する責任の所在を明確にしておきましょう。
建物管理業務では設備故障の見落としや清掃の不備など、さまざまなミスが発生する可能性があるため、責任の範囲と補償内容を定めておく必要があります。
契約書には、管理会社の善管注意義務(一般的に要求される程度の注意)の範囲や責任を具体的に記載します。
例えば「法定点検の実施漏れにより法令違反が発生した場合は管理会社が罰金を負担する」「清掃の不備により害虫が発生した場合は駆除費用を管理会社が負担する」など、具体的なケースと費用負担を明記しましょう。
一方で、地震や台風などの不可抗力による損害や、ビルオーナーの指示による作業での問題については管理会社の責任を免除する条項を設ける必要があります。
ビルオーナーと管理会社双方が納得できる管理体制を構築するためにも、責任の範囲を細かく決めておきましょう。
・契約解除・更新のルールと条件を記載する
建物管理委託契約の円滑な解約や更新をおこなうためにも、契約解除・更新のルールと条件を明確に記載しましょう。
解約条件については、通知期間や解約理由、違約金の有無などを具体的に定めます。一般的には、3ヶ月〜6ヶ月前の書面による通知で契約解除できる場合が多く、正当な理由のない一方的な解約の場合は違約金を設定するケースもあります。一方、無断での業務放棄や横領など、管理会社に重大な契約違反があった場合は即時解除可能とする条項も含めておきましょう。
契約更新については、自動更新の可否や更新料の有無、契約条件変更の手続き方法を明記します。例えば「契約期間満了の2ヶ月前までに申し立てがない場合、同一条件で1年間自動更新する」「管理手数料の変更は契約更新時のみ可能」など、更新に関するルールを具体化するのが一般的です。
■まとめ|建物管理委託契約書の内容を吟味し業者への依頼を検討しましょう
清掃業務や設備点検、入居者対応や長期修繕計画などの業務範囲を具体的に明記することで、委託後のトラブルを防げます。
入居者の満足度向上や、建物の資産価値維持のためにも、建物管理委託契約書の内容を吟味したうえで管理会社への依頼を検討しましょう。
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