第17回 外国人材の活用が不動産の資産価値向上のカギに! 「特定技能外国人材」特集

わが国のあらゆる産業で「人手不足」が深刻化しています。ビルメンテナンス業も例外ではなく、人手が足りないため、メンテナンスの仕事が受けられない等の受注調整が発生しています。適切なビル管理が行く届かなくなると、テナントやビル利用者からのクレームに繋がり、ひいてはビルの資産価値に悪影響を及ぼす恐れがあります。


生産年齢人口が減少するなか、ビル所有者の大切な資産を守り、価値を高めるため、ビルメンテナンス業界では「特定技能外国人材」の活用が進んでいます。



■生産年齢人口減少、人手不足が進行中

わが国の生産年齢人口は1995年をピークに減少に転じ、あらゆる産業で人手不足が深刻化しています。「令和4年度版情報通信白書」によると、1995年には8,716万人であった生産年齢人口は、2065年には4,529万人にまで減少すると見込まれています。




特に建設、メンテナンス、医療福祉・介護、物流といった、いわゆる「エッセンシャルワーカー」といわれる人手の不足が深刻化しており、国民の生活を支える社会インフラへの影響が懸念されています。


実際に帝国データバンクによると、2024年上半期は、物流や建設業界を中心に人手不足が原因の倒産件数が182件発生しており、年間ベースで過去最多だった2023年(260件)を上回るペースで推移しています。




■人手不足により、不動産の“適切な維持管理”が困難に?

ビルメンテナンス事業者でも、人手不足は深刻な状況となっています。全国ビルメンテナンス協会の調査では、会員企業の90.4%が「現場従業員が集まりにくい」を悩みとして挙げています。


ビルメンテナンス業は、コロナ禍において国から「社会の安定の維持のため、事業の継続が求められる事業」とされましたが、人手不足により事業の継続が危ぶまれる事態となっています。


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コロナ禍を経て社会活動が回復・活発化し、入国制限等の水際対策が緩和されてインバウンドが増加する中、オフィスビルや商業施設、ホテルなど建物の利用が増加し、ビルメンテナンスの需要も拡大しています。しかし人手不足により需要に対応しきれず、やむなく受注を見送るビルメンテナンス事業者も現れているのが現実です。



従来は当たり前に行われていた「建物の適切な維持管理」が人手不足によって実施できなくなり、ビルの管理状態が不適切になると、テナントや利用者の不便を招くだけでなく、不動産価値が低下してしまうことも懸念されます。



■高度な技術と日本語能力を持つ「特定技能外国人材」とは

人口減少が止まらないなか、人手不足対策の一つとして「外国人材の活用」が注目されています。2019年には在留資格「特定技能」制度が開始され、一定の技能と日本語能力を持った外国人材の在留が許可されるようになりました。


ビルメンテナンスの主要業務であるビルクリーニング(清掃管理)も「特定技能1号」の対象分野となり、2023年12月現在で3520名の特定技能外国人材が活躍しています。出身国はベトナム、インドネシア、フィリピン、ミャンマー、ネパールなど多種多様。ビルクリーニング分野の特定技能外国人材を受け入れている機関は、2023年12月末現在で403事業場まで拡大しています。



特定技能1号外国人材は、それぞれの分野で一定の技能と高度な日本語能力を持っています。ビルクリーニング分野では、全国ビルメンテナンス協会が実施する「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」の合格を経て、ビルクリーニングに関する高度な技術力と知識が証明され、高いサービス品質を提供することができます。


ビルクリーニング分野で働く特定技能外国人材は、向上心が高く、20~30代の若く優秀な人材が多いのも特徴です。雇用するビルメンテナンス事業者や、業務提供先のビル所有者やテナントからは「キビキビ動き、真摯に仕事に取り組んでいる」、「向上心が高くて仕事を覚えるのが早い」、「日本人と比較して遜色ないスキルを持っている」など、高い評価を得ています。


その他にも副次的な効果として、英語などの外国語を話すことができる外国人材は、特にホテルや商業施設など訪日外国人が多い現場で活躍しているほか、外国人材がいることでその国の文化や価値観が共有され、サービスの幅が広がるなどの成果が見られています。


さらに2023年6月より、特定技能1号よりもさらに高い技能と日本語能力が求められる「特定技能2号」に、ビルクリーニング分野が追加されました。特定技能2号では「自らの判断により高度に専門的・技術的な業務を遂行できる、または監督者として業務を統括しつつ、熟練した技能で業務を遂行できる水準」という熟練した技能が求められ、ビルメンテナンス事業者の中核を担う人材ということができます。


今年5月、第1回目となる「ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験」が実施され、初の合格者が誕生しました。前述のとおり高い能力が求められる試験は、受験者30人中、合格者はわずか3名。業界ではこの難関を乗り越えた優秀な外国人材がビルメンテナンス業界で活躍することにおける、生産性の向上や業界の活性化が期待されています。


【参考】
「ビルクリーニング特定技能2号評価試験」合格者インタビュー
FILE 1
FILE 2


■特定技能外国人材の雇用は「優良な事業者」の目安

優秀な特定技能外国人材を雇用するためには、企業側にも条件が課せられています。ビルクリーニング分野においては、建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)に基づく「建築物清掃業(1号)」または「建築物環境衛生総合管理業(8号)」の事業登録が必要です。


登録制度とは、ビルメンテナンス事業者が建築物衛生法に基づく一定の物的・人的基準を満たしている場合、都道府県知事の登録を受けることができるという制度で、質の高いサービスを提供する優良な事業者の目安となるものです。


【参考】
厚生労働省「建築物における衛生的環境の確保に関する事業の登録について」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei11/03.html
(公財)日本建築衛生管理教育センター「登録営業所」
https://www.jahmec.or.jp/eigyosyo/

特定技能外国人材を雇用するには登録を受ける必要があるため、特定技能外国人材を雇用しているビルメンテナンス事業者は、必然的に優良な事業者であるといえます。また、外国人材の採用にはコンプライアンスを順守することが絶対条件です。したがって、安心して業務を任せていただくことができます。


労働力人口の減少という回避できない状況を前提に、国民の生活スタイルの変化や訪日外国人の増加などに対応し、求められるビルの安全、衛生、快適を守り、もって不動産の価値を向上させていくために、優れた能力をもつ特定技能外国人材の活躍は欠かせないものとなると予想されます。


優秀な外国人材を雇用する、優良なビルメンテナンス事業者にご発注ください。



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