■はじめに
政府の地震調査委員会は、昨年の元日に発生した能登半島地震や、その後各地で継続的に発生する地震を検討し、本年1月、南海トラフ地震の30年以内の発生確率を、これまでの「70〜80%」から「80%程度」に引き上げました。これは南海トラフ地震が「いつ起きてもおかしくない段階」であり、引き続き大地震に備える必要があることを示しています。 また人間の活動が地球温暖化に影響を及ぼした結果、台風の大型化とその遅延・居座り、ゲリラ豪雨、線状降水帯などが、毎年のように発生する事態が続いています。風水・土砂災害にも常に備える必要が浮上してきています。 このような近年の災害頻発に対処し、経済活動をいち早く復旧・復興させるために、政府は「国土強靭化」政策を推進しています。その手法の一つにBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)が含まれます。 ここでは主に建物オーナー様向けのBCPについて触れていきます。1.BCPの本質

2.BCP策定のメリット
ここでは「建物の資産価値を維持・向上させる」観点から建物オーナー側のBCP策定メリットを確認します。 資産価値が高い建物はテナント誘致に関係するので、まず建物を利用するテナントがBCPについてどのような意識を持つかを確認します。 1)B C Pに対するテナントの認識 図2.メインオフィスを設置する物件にあると良い要件

3.BCPを策定するには
詳細は省きますが、内閣府や経済産業省、中小企業庁が企業のB C P策定率を上げるために試行錯誤した結果、「事業継続(B C)できれば、その企業にあったやり方で良い。時間をかけて膨大な事業継続計画書類(BCP)を作成する必要はない」と結論付けています。そして計画よりも実行力を重視する観点から「事業継続力:Business Continuity Power(BCP)」という表現も使うようになっています。 ここでは事業継続力を上げるために必要な、最低限の書類活用について紹介します。 1)事業継続力強化計画 中小企業のための簡易なB C Pで「事業継続力強化計画」と呼ばれます。 これを策定し、経済産業大臣に認定されると、税制措置や金融支援、補助金の加点などの支援が受けられます。 図3に含まれる「無停電電源装置」「耐震・制震・免震装置」等の導入に関しても税制措置が取られるのでビルオーナー側の皆さんは検討されると良いでしょう。 参照先:独立行政法人 中小企業基盤整備機構 災害対策支援部 災害対策支援課 2)静岡県事業継続計画モデルプラン(入門編) 災害対策先進県の静岡県のB C Pは充実かつ簡潔にまとめられています。BCP策定にあたっては社員全員に認知してもらう必要があります。 まず、参照先のH Pより『BCPの入口』を引用し、自社の「ヒト・モノ・金・情報」について考える機会を設けます。 次に『B C Pモデルプラン』の共通フォーマット作成に取り掛かりましょう。 これは表紙や目次を除けば6ページ程度で「基本方針」「被害状況の想定と影響評価」「事前対策実施」「緊急時の体制整備」「BCPの定着と運用・改善」という内容になります。 このフォーマットの良いところは「掲示用」書類がついており、策定した6ページ分をA3両面にコピーして掲示することが可能な点です。BCPを“絵に描いた餅”にしないために常日頃目につく場所に置き、都度訓練を繰り返し、最終的にはBCP書類を見なくても、速やかに災害対応に行動できる能力、事業継続力こそが重要となります。 そのための適切なフォーマットです。 参照先:静岡県事業継続計画モデルプラン(入門編) 3)災害時避難所衛生マニュアル(一般社団法人 大阪ビルメンテナンス協会) ※1で示したように、建物管理側が災害時に待ったなしで対応を迫られるのが「トイレ問題」です。 これに対応するために、(一社)大阪ビルメンテナンス協会ではマニュアルを作成し、上下水が使えない状況下での携帯トイレを用いた衛生維持の方法等を掲載しています。 現在、(一社)大阪ビルメンテナンス協会HPに簡易版マニュアル、またDVDも近日発売予定なので参照されると良いでしょう。