第18回 「エコチューニング」特集

第1回目の特集では、いまも続くエネルギー価格の高騰に対する有効な一手として「エコチューニング」の有用性をご紹介しました。
そして第2回目の特集では、公共物件の制度導入やエコチューニングの法的立ち位置についてご紹介しました。
今回の第3回目では、環境省が推奨する契約方式で、導入が進み始めた「成果報酬型契約」についてご説明します。



■建物オーナーでも安心して契約可能な「成果報酬型契約」

改めてエコチューニングとは、ビルエネルギー管理のプロフェッショナルが、普段は目につかないビル設備の運用を常に見直し・改善し、快適性や生産性を確保しつつ、ムダなエネルギー消費と温室効果ガスの排出を抑える設備管理手法です。
運用改善による手法のため基本的に設備投資が不要で、建物オーナにとって導入リスクが低いことが特長です。
事業の詳細や事例は、第1回目の特集をご覧ください。


「エコチューニング」は、脱炭素社会の実現に向けて建物のエネルギー分野で貢献を目指す環境省の事業です。
国の「地球温暖化対策計画」にも明記された、国が推進する重要な施策です。

本制度は主に2つの契約方法により実施されています。
一つは「固定報酬型」です。
委託している設備管理業務の仕様にエコチューニングを業務仕様に追加し、業務委託費として対価を支払うという一般的な契約方法です。

そしてもう一つが、今回ご紹介する「成果報酬型」です。
これはその名のとおり、エコチューニング業務を事業者に委託し、業務の結果によって削減された光熱水費から一定額・一定割合を報酬として支払う契約方法です。

この契約では、これまで光熱水費として支払っていた費用のなかからエコチューニング事業者への報酬を支払うため、建物オーナーはリスクを負いません。
エコチューニング事業者もエネルギーの無駄を減れば減らすほど報酬を得ることが可能なため、積極的にさまざまな省エネ手法を取り入れることができます。

互いにWIN-WINのビジネスモデルとして「成果報酬型契約」を環境省は推進しています。
ただ、従来のビルメンテナンスでは仕様発注型の契約が主流だったため、成果報酬型の契約事例が進んできませんでしたが、国が掲げる2050年カーボンニュートラルや世界的な地球温暖化防止、SDGsの流れなどを受け、主に不動産ファンド所有物件を中心に成果補修型の契約が広がりを見せています。

一度取り組んでしまえば建物オーナーにとってはリスクが極めて少なく、メリットが大きい契約です。

ビジネスモデル概要建物オーナーメリット
【固定報酬】…A
従来の設備管理業務にエコチューニングを業務仕様に追加し、業務委託費として対価を払う
エコチューニングによる追加業務(例えば、診断・計画策定)について、固定報酬を払う。
既存の設備管理業務とは別業務として発注することも想定する。
一定規模以上の建築物であれば、固定報酬として設定する報酬額を上回る光熱水費の削減を見込むことができ、新たな業務費用は発生しない。
エコチューニングを継続することで蓄積される設備機器の運転データ、それに対応する消費エネルギーの変動データを、設備機器更新時に活用することで、更新時の機器ダウンサイジングが期待できる。
【成果報酬型】…B
エコチューニングにより 削減した光熱水費の一定額・一定割合を対価として払う
エコチューニングの結果として得られる光熱水費削減効果の一部を業務の成果として、契約時に定めた額や割合に応じて業務報酬を払う。エコチューニングによって削減した光熱水費からの報酬となり、新たな業務費用は発生しない。
エコチューニングを継続することで蓄積される設備機器の運転データ、それに対応する消費エネルギーの変動データを、設備機器更新時に活用することで、更新時の機器ダウンサイジングが期待できる。


エコチューニング推進センターでは、性能発注型の本契約を結ぶための契約書ひな形や、報酬の算定の参考となる資料などをご用意しています。 興味をお持ちの方はぜひお問い合わせください。



今後もエネルギー料金の高止まりによる利益減少の打開策、2025年の「GHG削減目標見直し」による業務他部門の削減目標(※1)への貢献の取り組みとして、エコチューニングをご活用ください。

(※1)現在、日本の削減目標は2013年比で46%だが、2035年までに60~66%の削減が求められる。
さらに、業務他部門は51%の削減目標だが、近い将来70%近い削減が求められる恐れがある。
参照:PDF 気候変動対策の現状と今後の課題について(環境省・経済産業省2024年6月)


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